アコンカグア その④

PLAZA DE MULAS ~下山

DAY 4 停滞

目覚めても憂鬱な気持ちは消えずモチベーションはゼロ。かといって8時間の道のりを引き返すのもめんどう。とりあえずベースキャンプに滞在することにした。BCの中心地から下ったとこにテントがあるためトイレに行く度に坂を登らなあかんくて、息が切れてしんどい。
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アコンカグア山頂には今だレンズ雲が居座っている。
ベースキャンプをうろちょろしてると先日会った日本人と遭遇。これからINKAのテントで食事をするそうでお喋りをしに一緒に入った。相方の日本人と韓国人の方と食卓を囲んだ。彼らは食事サービスを頼んでいるが僕は頼んで無いので食事は無し。昼食は50$程度で頼める。山も結局、札束で殴るゲーなんだなと実感した。そこで会ったKさんとHさんは日本ではプロのガイドだそう。Kさんは去年もアコンカグアに来て残り100m地点で高山病によりリタイア、今年再挑戦のようだ。一人になるのが嫌で夜までお喋りした。少し気は紛れたけれどあんまりモチベーションは上がらない。晩御飯を食べて寝る準備。山中でのひそかな楽しみは寝袋の中でダウンロードしておいたワールドトリガーを読むことだった。ドハマリして続きが気になってしょうがなかった。9巻までダウンロードしていて、終わりのシーンがここ。
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ワールドトリガーを知ってる人ならたまらんシーンのはず。20巻まで出てるけどココがピーク。(今もだいぶ面白い)続きが気になりすぎて山とかほんとにどうでもよかった。下山後すぐにスクエア最新刊まで追いかけた。 陽太郎とヒュース好き。

DAY 5 虚無

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ちょっと元気になった。でも登山のモチベはあんまり湧かず午前中はテントでゴロゴロ、お昼すぎにテントを出て昨日と同じINKAのテントへ。また適当にお喋りして、翌日はC1カナダまで散歩することにした。この日は何もせず就寝。

DAY 6 BC ~ C2 NIDO DE CONDORES (5500M)

天気は晴れ。この日あたりからアコンカグアのレンズ雲が消えた。8時ごろにテントを出て、手ぶらでキャンプ1カナダ(5000m) へ。

ジグザグの登りがひたすらに続く。

Horcones氷河。
上から吹き下ろす風が冷たい。
コースタイムは3時間と聞いていたが2時間弱で到着。たくさんのテントがあった。今年は雪が少なく飲み水の確保が大変らしい。(ハイキャンプ以降は雪を解かす)

カナダから上を眺める。
まだ時計は午前の10時、高山病の兆しも無くてもうちょっと進むことに。2時間ちょっと歩いてキャンプ2NIDO DE CÓNDORES (5500m)の近くまで来たが、雪が多くなってきたところで中断。スリップの危険はあんまりないけど、防水の靴を履いてなくて断念。靴下を濡らしたくない。そこからの景色でも十分な絶景で、もうここ山頂でよくね?ってくらい満足した。寒くて写真は撮れず。下山していつものようにお喋り。山頂へのモチベーションが無く山を降りることを話すと、食料に困ってる日本人がいることを聞き、有り余ってる僕は喜んで差し出した。夕食は35$支払い彼らとRANKOのテントで食事をした。ステーキが美味かった。超小さかったけど。

DAY 7 オフ

午前中はまたゴロゴロしてた。ポカポカ陽気が気持ちいい。旅に出て山奥に来てもニート気質は変わんない INKAのテントに行くと、韓国人のおじさんにBCから日帰りで行ける山Cerro Boneteに誘われて次の日行くことに。インド人の女の子も来るらしい。

DAY 8 BC ~ CERRO BONETE

10時にベースキャンプを出発。INKAの人の情報によると行きが3~5時間、帰りが2時間ほどのよう。
荷物も無いしこれまでに比べたら余裕。

もはや見慣れた風景がひたすら続く。
サクサクと進み3時間半ほどで登頂。

チリ側のアンデス山脈を望め、ここアコンカグアでいいやとマジで思った。チリのパタゴニアから来たオジサンがデッサンしてて連絡先を交換。現地の知り合いを作ると、その土地に行ったときの観光が捗る。

1時間くらい山頂で景色を楽しみ下山。下山中インド人の女の子に、一緒にサミットを目指さないかと誘われた。あんまり乗り気じゃなかったけど、彼女はポーターを使っていて、テントなどがすでにハイキャンプにあるらしく、共有していいよと言われた。テントを持って行かなくていいとなると、荷揚げの日がいらなくなる。サミットを目指す気はなかったが、お邪魔させてもらうことにした。翌日出発。
元々のプランは
BC ~ C1(荷揚げ)
BC ~ C1(泊)
C1 ~ C2(荷揚げ)
C1 ~ C2(泊)
C2 ~ C3(泊)
C3 ~ アタック~ BC
を考えていたが、高度順応が問題無いことと荷揚げの必要がないことで次のプランに。
BC ~ C2
C2 ~ アタック ~ BC。
これまでに聞いた情報で
・C3(6000M)ではほぼ寝れずに体力が回復しないから、多少距離は伸びるがC2からのアタックがベター
・C1は雪が少なくC1を飛ばしてC2に行く人も多い
ということを聞いて1泊2日プランで突撃することに。少しワクワクしてきた。
下山後、天気予報を見て天候の確認。晴れ日はしばらく続くが強風が続く模様。少し判断が迷う。高所ほど風は強くなりアコンカグアのアタックできる風速はベストで40km/h(11m/s)、50km/hからは少し危険、60km/hではレンジャーからは停滞すべきと言われるだろう。アタック予想日は60km/h前後だった。その翌日も変わらず、さらにその翌日は80km/hを予報していた。次に天気が安定するのは5日後、そこまで待つ気力も無いので行くことにした。

夕陽に焼けるアコンカグア

DAY 9 BC ~ C2 NIDO DE CONDORES

天候は晴れ。
朝8時にインド人に彼女と出発した。この日初めてダブルブーツを着用しての登山となった。慣れない靴でぎこちなく歩きながらもなんなくC2に到着。6時間ぐらいで着いた。NIDO DE CÓNDORES はコンドルの巣という意味で本当にコンドルが飛んでいる。
彼女は天気予報を見てアタックはまだしないそうだ。明日は俺だけで行くことを伝えた。
水を作るために雪を集める。ガリガリで土混じりの雪ばっかりだった。
溶かした後、砂利が入らないよう気をつけながらナルゲンボトルに移す。こんな面倒なこと何日もやってられん。しかもここは標高5500m。何をするにしても息が切れる。一瞬でも無酸素運動をしようものならしばらく悶えるハメになる。それでもここの景色は美しく後悔や辛さを上回り、心を満たしてくる。


サンセットとマジックアワー。

DAY 10 アタック

深夜2時アタック開始だ。この日のためだけに使う防寒グッズを取り出し身に纏う。ダブルブーツの紐を締める手がめちゃくちゃかじかむ。紐を結びダウンミトンを着用し、テントの外に出る。ありったけの防寒をしているがそれでも寒さを感じてしまう。
ヘッドライトを頼りに暗闇の中からトレースを見つけひたすらたどる。2時間ぐらい歩いたあたりから、数歩ごとに休息が必要なほど酸素が薄い。幸い頭痛等、高山病の症状は無い。つらいなあ、しんどいなあと頭の中で愚痴りながらもう2時間ほど歩きキャンプベルリンを超えた辺りで引き返す登山隊に遭遇した。強風で引き返したと言っている。ここまで来たし若干の悔しさもあったが僕も引き返すことにした。このときは山頂に立つ思いよりも普通の日常に戻る思いの方が大きく、やっと降りれる・帰れると感じホッとした。

標高6000mからの眺め。バカでかい氷河を一望できる。

テント撤収の必要も無いので、一気にベースキャンプまで下る。昼前にはBCに帰ってこれた。BCにあるベンチでポカポカ日光浴をしていると、いつもお喋りしてくれていたKさんHさんも降りてきた。彼らも今日をアタック日にしたが、Hさんのコンディション不良で途中下山したらしい。明日もう街に帰るらしく、僕一緒に降りることにした。ちなみに1600USDでヘリに乗れる。4人くらいで割り勘すればリーズナブルかも(?)。というかレスキュー保険入ってるし何らかの病気でヘリで帰りたかった。
この日のINKAの夕食はバーベキューらしく、外で肉焼いていた。食事サービスを頼んでいない僕は食べれないのだけど、Kさんが僕の分を取ってきてくれた。まじ美味しい。アルゼンチンの肉は最高に美味い。

DAY 11 PLAZA DE MULAS ~ MENDOZA

テントを片付ける。帰りもムーラを使うのでムーラに預ける荷物・手荷物とに分ける。帰りの利点としてテントも預けて問題無いので荷物が軽くなる。と、思いきや半額ムーラを使うためいろいろ調整した結果、手荷物が来た時より重くなってしまった。テントを入れた代わりに2人分のピッケルとアイゼンを持ってくことに、とほほ。
9時までにムーラ用荷物を預け、9時半に開く支払い所でムーラ代を払う。現金でもカードでもOK。
10時すぎに3人で出発。来た道を全力で下る。plaza de mulas 4hrsの看板まで2時間で着いた。ここからは下りが少ないのでconfluencia まで3時間ほどはかかる。

15時ごろにconfluencia に到着。来た時の谷はさらに凶悪になっていた。昼食を取りがっつり休憩しhorconesへ向けて出発。これまで岩山に囲まれてたせいか、緑のある山岳景色がより絶景に見える。行きは気づかなかったが、アコンカグア山頂がチラリと見える。

奥の方に見える雪を被ってる山がアコンカグア
Horcones に着きINKAの迎えを待つ。Penidentesまで戻り、ムーラの荷物を受け取る。ここから帰る方法は
・事前にINKAでプライベートバンを頼む
・午後8時ごろに通るバスに拾ってもらう
の2通りがある。
Kさんたちのプライベートバンに同乗させてもらえメンドーサの街へ帰還。10日ぶりのシャワーを浴びる。シャンプーがなかなか泡だたなかった。ふかふかのベッドで就寝。
バスの場合はバスが通過するときに手を挙げるヒッチハイク方式。料金は250ARS。

高度順応もバッチリだったし体力的にも行けそたと思う。負け惜しみだけど。長期の高所登山はメンタルゲーでした。18日間キッチリ天気を待てるメンタル作りが大事そう。焦らないことが大事。僕は山登りが嫌いで(しんどいことは基本嫌い)、これまでの登山はアコンカグアへの体力作りのために登ってた。実際アコンカグアに来て、もう少しで頂上に手が届きそうだったけど、山頂よりもゴロゴロyoutube見るだらけた生活のほうが輝いて見えた。ニート気質すぎワロタ。それでも、高い場所からの景色は大好きでしんどいしんどい言いながらまた山を登ると思います。